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【 結納 】

結納の始まりは酒と肴の贈呈

結納は日本の伝統的な婚約式の形式です。結納という習慣は、両家の婚約成立を確認する意味で、嫁や婿の“もらい方”が“くれ方”に酒の肴を贈り、と共に飲食することから始まりました。その酒や肴が次第にhな嫁の衣装や装身具となり、近年では、伝統的な結納は形式的な添えもの化して、金銭が中心になりました。結納を受けると、その半額を返す「結納返し」も行なわれ、両者を含めて「結納」と総称することもあります。

「結納」の言語は、結婚の申し込みをする“いい入れ“(言納または結納)だという説が有力で、この「納(いれ)」が「納(のう)」と読まれるようになったといわれます。また、家と家との婚姻関係で結びつけるために酒肴が贈られたことから“結いの物”と呼ばれ、これがさらの結納になったという説もあります。

結納は中国の六例思想に基づいて「納采(のうさい)」とも「納幣(のうへい)」とも呼ばれ、「縁約の式」が行なわれました。天皇家では、「納采の儀」が行なわれます。民間では、「樽入れ」「酒おさめ」「すみ酒」「きめ酒」「手じめ」などと地方によってさまざまな呼び方があります。

また関西では、扇を贈り合う風習があり、「扇納」とも呼ばれます。

仲人がまとめるべき八ヶ条

両家の結納の段取りは、間に立つ両家の希望を聞いてまとめるわけですが、その際仲人は、結納式をつつがなく行なうために、次の八ヶ条について確認しておく必要があります。

第一条 最近は形式的な結納を省略しようと考える人も増えてきました。両家とも結納を行なう意志があるかどうかを、しっかりと確認する。
第二条 結納にはさまざまな呼び名があるように、地方によってしきたりが違います。出身地の違う両家では、しきたりが違うことがありますので。事前に両家と充分話し合い、両家の習慣を尊重しながら話をまとめます。
第三条 結納式には正式と略式とがありますので、どちらにするか決めておきます。
第四条 日時は、仲人、両家の都合のよい吉日を撰んで決めますが両家に異存がなければ、特に吉日にこだわるはありません。時間は夕刻以後を避けます。午前中が望ましいが夕刻にかからなければ午後でもよい。
第五条 結納の品目は、両家が同額になるように事前に決めておきます。
第六条 結納金について、女性側が結納金のお返しを行なうか省略するかを確認し、省略の場合も含めて、結納金をどの程度の金額にするのが適当かを、両家の意見を調整しておきます。
第七条 当日の服装については、両家が同格になるように、あらかじめ決めておき、和服にするか洋服にするか、礼装にするか略礼服にするか調整しておきます。仲人自身の服装も両家に準ずるようにします。
第八条 結納を行なう当日の着席順、儀式の手順、挨拶の言葉などをあらかじめ伝えておきます。

結納品の九品目とその意味

結納の品々は、地方によってさまざまですが、原点は、婚約が整ったことを酒を酌み交わして喜び合うことにあり、酒と肴が中心でした。角樽(つのだる)の酒と二尾の鯛を腹合わせに結んだ懸鯛(かけだい)だけという地方もさります。古くは、三種一荷、五種一荷などといわれたが、「荷」とは酒のことで、「種」のほうは肴のの種類を表しています。肴もだんだん生魚や生ものは少なくなり、一般的には、あわび、昆布、するめ、かつお節などの干物が用いられようになりました。この酒と肴に、女性のための小袖や帯が加えられるようになり、最近では、酒は樽料として、小袖や小袖料、帯料、そして女性側からは袴料として、結納金(金包)という形で、金に替えて贈るのが普通になりました。

結納の品々もすっかり様式化して、デパートなどで結納品一式がセットとなって売られています。種類も、五品目、七品目、九品目などがあり、目録も受け書(結納を確かに受け取ったという領収書)も印刷されており、本人が名前を書き込むだけになっています。もちろん、両家とも同じ品目にするが、せれは仲人に相談して決めればいいでしょう。

九品目の結納品を紹介しましょう。(五品目の場合は一から五まで、七品目の場合は一から七まで)

一、目録 (もくろく) 結納の品名と数量を記したもの
二、長熨斗 (ながのし) あわびののし=あわびは長生不死の貴重な海産物
三、金包 (きんぽう) 結納金=男性側から女性側へ御帯料または御小袖料として、女性側から男性側へ御袴料として現金が贈られる。数量は、それぞれ一対。
四、末広 (すえひろ) 白無地の扇子。寿恵広とも書く=純白無垢と家運の末広がりを象徴。数量は、それぞれ一対。
五、友志良賀 (ともしらが) 麻糸=共に白髪になるまで仲むつまじくという願い。数量は一台。
六、子生婦 (こんぶ) 昆布=子孫繁栄を象徴。数量は一台。
七、寿留目 (するめ) するめ、寿留米、寿留女とも書く=堅実さの象徴、不時に備えての食料の意味も。数量は一台。
八、勝男武士 (かつおぶし) かつお節。勝男節、松魚節とも書く=男として強さの象徴、不時に備えての食料の意味も。数量は一台。
九、家内喜多留 (やなぎだる) 柳樽=清酒を入れる朱塗りの祝い樽で、家内円満の願い。今では酒の代わりに現金が贈られる。数量は一荷。

これらの九品目(または五品目、七品目)が白木台に載せられるのが関東風ですが、今では全国的に普及しています。派手に二、三台の白木台に載せることもあります。また、指輪を金包の台に添えることもあります。

関西では、小袖料としての金包、酒料としての柳樽料、肴料としての松魚料の三品がそれぞれ松竹梅の水引をかけられて三台に載せられ、これに熨斗と末広がついて五台に飾られます。派手になると、さらに寿留女と子生婦の現物を白木台に、高砂人形、そして指輪台がつきます。目録は別に片木盆に載せられます。

いずれにせよ、結納品はほんの形式にすぎず、実質的には結納金中心に考える人が増えている一方、形式的な結納は一切やめて、結納金も不用として、指輪だけを贈ったり、記念品を交換する人たちも増えています。

結納をするもしないも、あくまでも結婚当事者の考え方次第です。本人同士がよく話し合い、それぞれの両親に相談して決めるのが、常識的な対応でしょう。

家族書、親族書、健康診断書

これらの結納品とともに、家族書、親族書、健康診断書を添えて出すのが慣例です。奉書紙に墨で書くのが正式ですが、白い便箋にペン書きでもいいです。

家族書は、父母、兄弟、姉妹の順に記し、親族書には、祖父母、伯父伯母、叔父叔母を父方母方に分けて住所氏名を記します。

奉書紙の場合は、横長に二つ折りにして、折り目を下にして墨書きし、左から先に三つ折りにしたら、上包みをかけ、「家族書」「親族書」と表書きします。ペン書きの場合も、下から三つ折りにして白い長封筒にいれます。

結納品はいつまで飾る?

受け取った結納品は、挙式の日まで床の間に飾っているのがしきたりで、訪問客に披露されます。本人の自室に飾られることもあります。地方によっては、披露宴の会場で改めて披露されるもともあります。とはいえ、最近は床の間のない洋風の家も増加しているなど、住宅事情もゆとりがなくなってきています。また、婚約期間が長いと、結納品が日あせてしまいます。そんな場合は、結納式の後しばらく飾ってから片付け、挙式前にまた数日間、飾るようにします。

結納品を新居に持っていく風習の地方もあります。荷物になるようだったら、目録だけ残して、あとは神仏品と一緒に年末に処分してかまいません。

しかし、一方では、本来、結納品は結婚の準備のために使われものなので、無くなるの当然であって、本来の趣旨からいって、いつまでも飾っている性質のものではないという考え方もあり、当座だけ飾って、あとは処分してよいという地方もあります。

確かに古くは、帯地にしろ小袖地にしろ現物が贈られて実際に仕立てられ、酒肴は干物となり、帯地、小袖地は代金として現金になって、結納品そのものが今日のように様式化、非実用化してしまったために、飾るか処分するかの迷いが生じ、地方によって飾っておく風習が生まれるとようになったわけです。

飾っておくべきか処分すべきか、新居に持っていくべきかなどは、両家で話し合って決めればいいでしょう。

結納金と結納返し

結納の額にはこれといった決まりはありません・結婚する本人(男性)の経済力に応じて十万円というケースもあれば、親がかりで五百万円という場合もあります。両家の経済事情、結婚観などによって様々なケースがあります。

しかし、だいたいの目安は、月収の二〜三倍といわれます。これも確かではありません。
いずれにせよ、両家の経済力を考えて額を決めるのが自然です。言いにくい事情があれば仲人を通せばいいでしょう。

風習として、女性側は結納金のお返しをすることになっています。これも、関東では“半返し”といって、贈られた額の半分を返しますが、関西では、結納の際ではなく、嫁入りの際に、結納金の三分の二くらいの額にあたる贈答品を持参します。

しかし、最近では、お返しの風習を省略して、その代わり、男性側の結納金の負担を軽くするという合理的な方法が普及しつつあります。

結納式には正式と略式がある

両家が結納を交換する、いわゆる結納式には、正式と略式があります。

正式の結納の手順は、まず仲人が男性側の家へ行って結納品を受け取り、女性側の家に届けて、今度は女性側の結納品と受け書(男性側の結納品を受け取った領収書)を持って再び男性側の家に届け、さらに男性側の受け書を女性側の家に届けるというもので、仲人は両家に二回づつ足を運びます。

だから両家が遠く離れて場合には、仲人に大変負担がかかります。

略式の結納式の場合は、仲人の家に両家の本人と親に来ていただき、両家の結納品を交換します、いわば合同結納式です。これだと仲人の負担はずっと軽くなるし、両家としても二度も仲人を接待しないですみます。それに、両家の親、本人がそろったところで準備の打ち合わせが効率よく進められ、時間と労力の節約になります。

というわけで、最近は略式で行なうことが非常に多くなりました。

結納式での席次

 日本間の席次(上座と下座)  
日本間の席次(上座と下座)  席次には上座、下座のしきたりがあり、原則的に左大臣が右大臣より上位につくように、左の座が上座、右の座が下座になります。
 和室の場合、本来床の間に一番近い席が最高の上座になります。そして床の間を背にして左側、つまり、わかりやすく言えば、床の間に向かって右側が上座で、ついで、やはり床の間に向かって左側の座、さらに右側の次の座という順位になります。したがって一応、床の間に向かって右側が上座になるのだが、内裏雛が、大正天皇の即位式における天皇、皇后の並び方にならって、向かって左側に男雛、右側に女雛が並べられるようになり、床の間に向かって左側に新郎、右側に新婦が並ぶこともあるので、どちらが上席とは、いちがいにいえません。
 結納式の席次(正式)  
結納式の席次(正式) 結納式は、正式の結納式では、床の間に向かって右側に、本人、父、母の順に座って仲人を迎え、仲人、仲人夫人は床の間に向かって左側に座り、対面する位置をとるのが通例です。
 結納式の席次(略式)  
結納式の席次(略式) 略式の場合は、床の間に向かって右側に男性側の本人、親の順に座り、左側に女性側の本人、親の順に対面して座ります。仲人、仲人夫人は、床の間に対面して、男性側、女性側を右、左に見る位置に並んで座ります。
略式の場合は、親は父母いずれか一人でもよいが、最近は、両親が出席するケースが多いようです。

洋室の場合は、欧米風に、入り口に遠い席が上座となり、向かって左側が上座、右側が下座になります。和室の席次とは逆だが、内裏雛式の上座下座の席次とは一致するので、上座下座の考え方も混乱気味になります。

ただ結婚披露宴に限っていえば、洋風はもちろん和風も中華風も、向かって左側に新郎、右側に新婦が、そしてやはり向かって左側に新郎側の席、右側に新婦の席が設けられるのが通例になっているようです。

●仲人への謝礼

仲人への結納の謝礼は、結納金の一割程度といわれます。感謝の気持ちを充分にこめて、のしをつけ、紅白結び切りの水引をかけて、「寿」あるいは「御礼」と表書きして贈ります。交通費等を考えて、別に「御車代」として贈ることもあります。仲人を車で送迎する運転手がいましたら、同じく「御車代」を包みます。なお、仲人に祝い膳を出さない場合には「酒肴料」を仲人に贈ります。これらの金額は、両家であらかじめ申し合わせておくといいでしょう。

仲人・本人・両親の口上と作法

結納式では、正式であれ略式であれ、口上も作法も様式化しているので、典型的なケースを紹介しましょう。口上は「幾久しく」がキーワードになります。

正式の結納の場合

仲人がまず男性側の家を訪ねて部屋に通されると、双方が席に着いてから、茶菓子が出されます。お茶は不祝儀に使われことが多く、嫌われることがありますので桜湯か昆布茶がいいでしょう。一服したあと、まず仲人が口上を述べます。

 仲人 本日はお日柄もよく、おめでとうございます。
 本人 お役目、まことにご苦労様でございます。どうぞよろしくお願いします。
 本人の母親が結納品をのせた白木台を仲人の前に運びます。ついで家族書、親族書、健康診断書をのせた片木盆を運びます。それぞれ仲人に正面を向けて置いたあと、
 両親 結納の品々と家族書、親族書、健康診断書は、仰せにしたがって整えてございます。どうぞご確認ください。
 仲人 (目録に目を通して)拝見いたしました。結構でございます。ただ今より、先方に納めて参ります。
 仲人は長居せずに辞す。玄関まで本人、両親が送り、仲人はそのまま女性側の家に訪ねます。冒頭の口上を述べたあと、
 仲人 ただ今、○○×雄様より△△子様へのご結納の品々をお預かりして参りました。幾久しくご受納ください。
 本人 ありがとうございます。幾久しく受納いたします。(あらかじめ用意しておいた受け書を差し出して)受け書でございます。どうぞお納めくださいませ。
 仲人 確かにお納めいたします。
 両親 お役目、まことにご苦労様でございました。粗茶でございますが、どうぞおくつろぎください。
仲人に茶菓子が出されます。昼時なら祝い膳を出します。昼時なら祝い膳を出します。祝い膳は尾頭つきの鯛、赤飯、向付、煮物、汁椀で、それに酒がつけられます。仲人はもう一度女性側の家に結納品の受け書を届けに訪ねるので、祝い膳はその際に出し、このときは祝い膳を出す代わりに「酒肴料」を贈ってもよい。しばらく雑談のあと、女性側の結納品と家族書、親族書、健康診断書が仲人の前に運ばれます。
 本人 恐縮ではございますが、この結納品と家族書、親族書、健康診断書を×雄様に幾久しくお納めいただきたく、よろしくお願い申し上げます。
 仲人 (目録に目を通して)かしこまりました。ただいまより参上いたします。
 両親 お役目ご苦労様でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
仲人は女性側の結納品と家族書など一式、それに受け書をたずさえて、再び男性側を訪ねます。
 仲人 △△子様もご両親もたいそうお喜びになられ、ご結納品を幾久しくお納めくださいました。これが受け書でございます。
 本人 (受け書を受け取り)お役目ご苦労様でございました。
 仲人 (女性側からの結納品を本人に差し出し)こちらは△△子様からお預かりさいたご結納品でございます。幾久しくお納めくださいとのことでございます。
 本人 ありがとうございます。幾久しく受納いたします。△△子様には、その旨どうぞよろしくお伝えください。これが受け書でございます。どうぞお納めください。
 仲人 確かにお納めいたします。これでお役目を滞りなく果たすことができました。お二人のために、まことにおめでたく存じます。
 両親 ありがとうございます。お陰様で結納式も滞りなくすみまして、あとは婚礼の日を待つばかりでございます。これからもなにとぞよろしくお願い申し上げます。粗酒ですが、一献さし上げたいと存じますので、どうぞおくつろぎください。
仲人をねぎらう祝い膳が出され、しばらく雑談したあと、仲人は頃合いを見計らって、結納品の受け書を届けるために、再び女性側の家を訪ねます。
 仲人 ×様もご両親もたいそうお喜びになられ、ご結納品は幾久しくお納めくださいました。これが受け書でございます。
 本人 お役目ご苦労様でございました。
 仲人 これでご結納品の交換が滞りなくすみました。お二人のために、まことにおめでたく存じます。
 両親 本日はまことにありがとうございました。お陰様で、あとは婚礼に日を待つばかりでございます。これからも、なにとぞよろしくお願い申し上げます。粗酒ですが一献さし上げたいと存じます。どうぞおくつろぎください。
このあと酒肴が出されて、しばらく雑談をします。これで仲人の役割はすべて終わります。

略式の結納の場合

 仲人 本日はお日柄もよく、おめでとうございます。このたびはお二人のご婚約がめでたくととのいましたこと、お喜び申し上げます。ただ今より、ご結納の交換を執り行なわせていただきます。
 仲人夫人が、男性側の結納品を女性側の前に置きます。
 仲人 ○○様からのご結納品でございます。幾久しくお納めください。
 男性 どうぞお納めください。
 女性 (座布団をはずして)ありがとうございます。幾久しくお受けいたします。
 女性は目録に目を通したあと、それを親の前に差し出します。両親が揃っている場合には、父、母の順に目を通して返すます。女性は目録を元どおりに包んでから、あらかじめ用意していました受け書を仲人夫人に渡します。
 女性 受け書でございます。どうぞお納めくださいませ。
 仲人夫人 確かにお納めいたします。(男性の親に、両親が揃っていたら母親に、受け書を差し出して)ご結納の受け書でございます。
 母親 ありがとうございます。(男性および両親共に、仲人夫人に礼をします。)
 母親、父親、男性本人の順に受け書に目を通し、最後に本人が自分の膝のわきに置きます。この間、仲人夫人は自席に戻ります。
 女性側からの結納もまったく同じ手順で男性側に渡され、受け書を女性が目を通して膝のわきに置いたところで、
 仲人 お役目を滞りなく果たすことができました。本日はお二人のご婚約がととのいまして、まことにおめでとうございます。
 これに対して、男性側の父親か母親が、両家を代表して、仲人夫婦に次のような口上を述べます。
 男性側 お役目ご苦労様でした。お陰様で結納が無事にすみまして、あとは婚礼の日を待つばかりでございます。これからも、なにとぞよろしくお願いします。
 仲人 (夫)私どももふつつかで、ご両家にご満足いただけるかどうかわかりませんが、できるかぎりお役目を果たす所存でございます。
 仲人 (妻)粗茶(粗酒)を用意しておりますので、どうぞ皆様、おくつろぎくださいませ。
 以上で仲人の役割は終わります。