葬のマナーと作法 葬儀のあと始末

葬儀のあと始末

葬儀・告別式が無事に終って、ほっとする間もなくやらなければならないことが、いろいろあります。葬儀は周囲の協力があって、はじめて滞りなくできますので、各方面へのお礼、挨拶回り、費用の支払い、香典返しなどは、きちんとやっておかなければなりません。

挨拶回り

各方面への挨拶回りは、昔は遺族が代理人を立て、二人一組で行なったものですが、最近は、喪主か遺族代表が、葬儀の翌日から遅くとも初七日までに、直接訪ねてお礼の挨拶をし、必要であれば現金か記念品を贈ります。
正式には喪服を着て訪問することになっていますが、略式喪装か地味な平服でもかまいません。

世話役、お手伝いの人

通夜からいろいろとお世話になった世話役やお手伝いをしていただいた方々には、葬儀が終った夜に食事を出してもてなし、帰りに、心づけではなく、きちんとした謝礼をします。現金を包むか、記念品を贈るかします。現金の目安は、葬儀社の人などに聞くのが無難です。
表書きは「御礼」「志」などで、現金ならば、白い封筒か不祝儀袋に入れ、品物なら半紙か奉書紙をかけて弔事用の水引をかけます。市販の不祝儀用のし紙をかけてももよい。

隣近所

隣近所には、什器や備品を借りたり、弔問客や車の往来や、路上に花輪を飾ったり、有形無形の迷惑をかけているので、お手伝いをしてもらわなくても、お礼とお詫びの挨拶に伺います。タオルや菓子折などを持参します。
また、テントやテーブル、椅子など、町内会から借りたものはすぐに返却して、電柱などに貼った案内札も、一枚残らずはがします。

勤務先、取引先

故人あるいは喪主の勤務先や関係の深い取引先にも、喪主または遺族代表が訪問して挨拶をします。直接の上司はもちろん、所属部署の人たち、ことに葬儀を手伝ってくれた人たちに挨拶をします。菓子折などを持参します。

主だった会葬者

一般の会葬者には、会葬礼状を郵送にせよ、葬儀、告別式の直後に手渡すにせよ、お礼の挨拶に代えるが、故人の恩人、特に世話になった人、弔辞を読んでくれた人、世話役代表、葬儀委員長など主だった人には、直接訪問してお礼の挨拶をします。喪服を着用するのが望ましいが、略服でもかまいません。現金が失礼にあたると考えるなら、品物を贈ります。

会葬礼状

会葬礼状は、前もって印刷所、葬儀社に手配しておきます。黒枠の私製はがきで、時候の挨拶を省略して、会葬のお礼を述べます。一般的には、喪主と親族代表の名で出しますが、友人代表、葬儀委員長の名を加えることもあります。文例のサンプルは、印刷所や葬儀社が用意しています。新聞に死亡広告を出した場合は、会葬御礼の広告も出します。
会葬礼状は、正式には葬儀、告別式終了後、一両日に郵送しますが、最近では、葬儀会場出口で、「清めの塩」などと一緒に手渡しをすることが多くなりました。
会葬礼状を郵送する場合、年末には出さずに年が明けてから出します。年賀状と前後して紛れ込むと、相手に不快感を与えるからです。十二月中旬すぎの葬儀なら、事情を説明して手渡しをします。
会葬礼状は、香典をもらわなかった人にも、また、会葬がなくても、香典、供物、お悔み状、弔電を頂いた人には全員に送ります。

葬儀費用の支払い

葬儀費用としては、病院への支払い、寺院、神社、教会への謝礼、葬儀社への支払い、つけの支払いなどあります。葬儀後、早めに行ないます。

病院への支払い

遺体を引き取る際に、病院から出た請求書を支払います。遅くても葬儀の翌日には支払います。特に世話になった医師や看護師には、謝礼を贈るか、菓子折を持参します。

寺社、教会への謝礼

僧侶、神官、司祭、牧師への謝礼は、通夜と葬儀の分をまとめてことが多くなりました。日頃、あまり付き合いがなければ、通夜、葬儀等、世話になるたびに謝礼をします。「御膳料」(食事)「御車代」は別途、その都度包みます。
寺院、神社、教会などへの挨拶は、葬儀の翌日、遅くても三、四日以内に、喪主か遺族代表が訪ねます。
謝礼の金額は、寺院、神社、教会の格式、葬儀の規模などによって違います。 規定料金を決めていないことが多く、その場合は、志次第となっています。 直接、率直にたずねてもかまいません。葬儀社や世話役代表、長老などに相談して謝礼をします。
寺院、神社の場合、 僧侶、神官の人数に関係なく、一括して謝礼を贈ります。教会の場合は、教会への献金という形をとりますので、世話になった司祭、牧師には、別に謝礼を包みます。
表書きは、仏式ですと「御布施」「冥加」「お経料」、神式なら「御神饌料」、キリスト教式なら「御花料」「献金」とします。宗教、宗派に関係なく、「御礼」「志」としてもかまいません。
市販の不祝儀袋や、半紙、奉書紙に包んで弔事用の水引をかけます。
なお、寺院、斎場、教会の会場使用料は別会計で、表書きは「御席料」「志」とします。

葬儀社への支払い

葬儀の二、三日後に葬儀社が祭具を引き取りに来ます。その際に、明細書と請求書を持って来ますので、あらかじめ打ち合わせていた予算どおりになっているかどうか、世話役代表の立ち合いのもとにチェックします。往々にして、双方の食い違いからトラブルに発展することがあります。内約をよく確認して、疑問がありましたら率直に問いただします。
また、ハイヤー、マイクロバスなどの交通費、死亡通知状、会葬礼状その他、別途料金になっている費用もよく点検します。
世話になったと感じましたら、葬儀社の従業員に心づけを渡してかまいません。

つけの支払い

通夜ぶるまい、精進落し、その他の食費、諸雑費で、仕出し店、寿司屋、酒屋などでつけになっている支払いは、請求書が来ましたらなるべく早く支払います。ことに、こまごまと世話になったら心づけを出します。

香典返し

本来はお返しは不要ですが・・・

香典は、もともとは故人の冥福を祈り、霊前に手向ける「香」の代わりに贈るもので、相互扶助的な意味もあります。お返しはいらないし、お礼の挨拶だけで良かったのですが、現在では、香典返しが慣例化しています。
通夜、葬儀の際の香典、供物記帳簿に、署名簿、住所録を参考にして、金額、住所、氏名を記入して整理した香典帳を作っておきます。世話役の会計係が、香典袋を参考に完全な香典帳を作ってくれると、遺族は助かります。
完全な香典帳をもとにして、会葬礼状や香典返しをすれば、送り洩れなどの失礼を防ぐことができます。

時期は忌明け後に

香典返しは、葬儀の日に、会葬礼状と同じく「当日返し」をすることもあります。通例は忌明け後に贈ります。
仏教では、五七忌(三十五日)か七七日(四十九日)のあとに贈ります。宗派によって違うこともあります。四十九日が年を越したり、正月三月日にかかるときは、三十五日のあとに贈ります。地方によっては初七日のあとに贈るところもあります。
伸道では「玉串料のお返し」にあたり、三十日祭(三十日目)か五十日祭(五十日目)のあとに贈ります。五十日祭が年を越したり、正月三月日にかかるときは、三十日祭のあとに贈ります。
キリスト教には、忌明けのしきたりも、香典返しの慣習も、もともとありませんが、日本では、日本的慣習を取り入れて、香典返しを行なう人もいます。一週間後にする人もいますが、一ヶ月後の召天記念式(プロテスタント)。三十日目の追悼ミサ(カトリック)のあと、香典返しをする人もあります。

必ず挨拶状を添えて

香典返しは、品物だけを贈ればよいわけではありません。必ず忌明けの挨拶状を添えて出します。
挨拶状は、奉書紙に薄墨で筆書きをして、奉書紙の封筒に入れるのが正式です。内容は、香典、供物を頂いたお礼、納骨、忌明けの法要(葬儀)を済ませて報告、香典返しを贈ったことなどで、前文はいりません。葬儀社や印刷所に文例のサンプルもあり、印刷もしてくれます。品物をデパートなどから配送する場合は、挨拶状を持参をして添えてもらうように手配をします。品物と別便で送ってもかまいません。

「半返し」か「三分の一返し」

香典返しの金額の規準は、地方によってさまざまで、香典の金額の半額の「半返し」、「三分の一返し」が一般的です。一家の長が亡くなった場合は、基準より少なめに、妻子の場合は、少し多めに、という考え方もあります。品物ではなく、ビール券や商品券などを贈る場合もあります。

品物は三種類ほど用意

最近は、全員に同じ物にすることも多くなりましたが、香典にはかなりの多い少ないがありますので、「半返し」「三分の一」の趣旨を生かして、金額別に三種類ほど品物を選び、香典の金額に応じて使い分けることも、よく行なわれています。
品物としては、白布地、シーツ、ハンカチセット、タオル、毛布、風呂敷、袱紗、漆器、陶磁器、インテリア小物などの日常用品か、のり、緑茶、紅茶、石鹸、砂糖などの食品がよく用いられています。
送り先が会社、団体宛なら、クッキー、菓子、キャンデー、お茶の詰め合わせなどが喜ばれます。
市販品でなく、故人の著作物、画集、遺稿集などもいいでしょう。

水引と表書き

香典返しの品は、正式に奉書紙で包み、黒白結び切りの水引をかけます。市販の弔事用のし紙でもかまいません。
表書きは、仏式では、「志」「忌明志」、神式は、「志」「偲草」、キリスト教式では、「志」とし、水引の下には喪家の名を記します。
忌明けの挨拶状を添えてデパートなどから直接発送してもらってもよいが、主だった人、特に世話になった人、隣近所には、直接持参して、お礼の挨拶を述べるようにします。

香典返しをしない場合

故人の遺志で、社会福祉施設、厚生事業団、育英資金、研究機関などの団体に香典を寄付する場合は、あらためて香典返しを行なう必要はありません。寄付先、金額、趣旨をしたためた挨拶状を送ります。
また、一家の長を失って遺児の養育や教育、将来の生活に不安を感じている場合は、その旨を記した挨拶状を送り、香典返しをしなくてもよい。

香典返しの礼状は不要

香典返しをもらって、その礼状を出すのは、不祝儀が繰り返されるというので、昔から忌み嫌われ、礼状を出しては失礼とされてきました。
ただ、忌明けの頃は、葬儀のあわただしさがおさまって、じみじみと悲しさ、寂しさが深まってくる時期でもあり、礼状ではなく、心をこめたお見舞い状を出したいものです。電話で力づけるのはかまいません。
また、香典返しを 受け取ったかどうか、喪家が気にするといけないから、という配慮で、お見舞い状にそれとなく「ご丁重なご挨拶をいただき恐縮に存じます」と入れます。

形見分け

袖分け、垢つき、譲り物

遺族が、故人の思い出や記念として、親族や故人の親しい人に、故人の遺品、愛用品を分けるのが「形見分け」で、故人の分身という意味で「片身分け」とも書きます。「譲り物」「袖分け」「裾分け」とも呼ばれます。
故人が使っていた衣類(たとえば着物、ドレス、帯など)、装身具(指輪、ネックレス、カウス、ネクタイピンなど)、趣味の道具(茶、釣り、ゴルフ、などの道具、万年筆、蔵書など)、本人の匂いがしみついているので、「垢つき」「お手汚し」などともいわれます。

身内の長老に相談

何を誰にわけるかは、故人の遺言や遺志があれば、それに従います。とかく高価なものには希望が集中して、トラブルになりまねません。身内で最も尊敬されている長老と相談して、文句がでないように心がけます。
最近は、価値観も変わり、古い物では喜ばれなくなり、相手に受け取る遺志があるかどうか、希望があるなら、何かわけたらよいが、あらかじめ尋ねておきます。
目上の人には、相手から希望がない限り、失礼になりますので申し入れません。

包装せず、はだかのままでよい

形見分けは贈り物ではないので、包装したり、水引をかけたり、熨斗をつけたりはしません。リボンもいりません。
着物、帯などは、タンスに畳紙に包んでしまってありますので、畳紙のままです。はだかのままわけるのがしきたりという地方もあるくらいです。
どうしても気になるならば、「ちりよけ」という意味で奉書紙をかける程度です。

送るのは法要のあとで

時期の決まりは特にありません。香典返し同様、忌明け頃がいいでしょう。
忌明けの法要や儀式には、親族や親しい人が集まりますので、その機会に、法要が終ってからわければいいでしょう。

形見分けは率直に受ける

形見分けを受けたら、特に欲しいものでない場合もあります。故人の供養のために遺族がもらってほしいという誠意を重んじて、素直に喜んで受け取るようにします。

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